講師コラム「エネルギーの明日」

エネルギー・環境問題の専門家に、毎回、様々な角度からエネルギーの視野を広げるお話を伺います。

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Vol.1 日欧のエネルギー事情

九州大学特任教授
(元佐賀大学海洋エネルギー研究センター長)

門出 政則 氏

近年、地球温暖化に対応するため、各国でエネルギー政策の見直しが進められています。欧州で最も再生可能エネルギーの導入に力を入れているドイツは、今どのような状況にあるのでしょうか? また、他の欧州各国のエネルギー事情は? ドイツに滞在経験があり、日本と欧州のエネルギー事情に詳しい佐賀大学の門出政則教授にお話を伺いました。

門出 政則 氏

ドイツにおけるエネルギー政策の今

ドイツでは、約10年前から太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を積極的に進め、原子力発電を減らす方向に動き始めています。東日本大震災後は、脱原発の動きをさらに加速させ、原子力発電を2022年までにゼロにする計画です。

ここに至るまでには、ドイツ国民全体で十分な議論が行われました。ドイツ人は非常にロジカルな国民性で無駄を嫌います。そのため、新たな制度を導入する前には徹底的に議論し、より効率的なルールづくりを行い、国民全体で決めたルールは遵守します。再生可能エネルギーを導入すると、どうしても電気代が上がります。そこで、ドイツでは国を支える産業界の電気代は上げず、値上げ分は一般家庭で負担することを国民が了承したのです。実際、ここ10年ほどで家庭の電気代は約2倍になっています。こうした議論やルールづくりなしに、ドイツと同じことを日本で取り入れることはできないでしょう。また、ドイツには再生可能エネルギーの推進に有利な条件もあります。国内にルール炭田という巨大な炭田があるように、国内の石炭による火力発電で、発電電力量の4割以上を賄っていますし、さらにヨーロッパは陸続きで、送電線が大陸全体につながっています。自国で余った電力を売ることも、また電力不足の際に隣国から買うことも容易にできるのです。実際、ドイツは、電力の多くを原子力で賄っているフランスから電力を買っています。

フランスを中心した電力の輸出入

 
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