九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.5 エネルギーと地球環境(5/5)
原子力発電の安全の必要性に合わせて、私の専門分野である放射性物質の話に触れておきたいと思います。私は放射能が自然界でどういう動きをするのかを研究してきました。研究データは福島原発事故でも活用され、放射性物質がどこへ、どういうルートで、どれだけ流入するかを評価する元になっています。福島原発での事故後、九州にも早い時期に飛来していますが、自然界に存在する放射能よりも低い数値でした。
放射能は自然界にも普通に存在しており、私たちは日々その影響を受けています。けれども自然界と同程度なら大きな問題になることはありません。放射能には半減期があり、地球が誕生した46億年前は地上の放射線は非常に高かったと考えられています。例えば放射性物質のカリウム40は46億年前には現在の12倍でした。生命が誕生する時期でさえ現在の8倍もあり、私たちの祖先は高い放射線の中で生き続けてきたのです。そのため私たちのDNAには放射線で傷つけられても修復する力が備わっています。問題なのは修復力を越えるような高い放射線を浴びたときで、自然界で起こるような変動の範囲内であれば影響は少ないのです。
放射能についての正しい知識を持つことはとても重要です。そのためには放射能や原子力について理解を深めていくための活動が大切ですし、市民の側も判別する能力を身につけていく必要があります。何をもって「安全・安心」と言うのか、しっかり考えてほしいと思います。