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講師コラム「エネルギーの明日」

エネルギー・環境問題の専門家に、毎回、様々な角度からエネルギーの視野を広げるお話を伺います。

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Vol.6 医療技術に活用される放射線の可能性

熊本大学 大学院生命科学研究部 教授
冨吉 勝美 氏

放射能や放射線と聞くと、何か特別なもの、ちょっと「怖い」と思う人もいるかもしれません。でも放射線は宇宙が誕生したときから存在し、人間は太古から放射線を受けて暮らしてきました。また、レントゲン写真(X線)のように医療分野では命を救うことに役立っています。そこで医療技術を研究している熊本大学教授の冨吉勝美氏に、放射線そのものや医療分野における活用について伺いました。

冨吉勝美氏

自然界にさまざまな形で存在する放射線

まず放射能や放射線という言葉についてお話したいと思います。放射能とは、放射線を発する能力のことで、放射能を持つ物質を放射性物質、放射性物質から発生した粒子や電磁波を放射線といいます。放射性物質の代表例としてはウラン238、炭素14、カリウム40などがあり、放射線の代表例としてはα線、β線、X線、陽子線、重粒子線などがあります。

実は自然界にも放射線は普通に数多く存在しています。例えば宇宙から飛んでくる宇宙線は陽子線などの放射線を含んでいます。また宇宙線が地球の窒素や酸素と核反応して生み出される中性子線などの放射線も身近にあります。

地球の大地、特に花崗岩にはウラン238などが含まれており(図1)、大気中にはラドンなどの放射性物質があります。また、人間が食べる食物(図2)や、人間の体内にも放射性物質は存在しています。

※放射線イメージングプレート撮影は、従来のレントゲン写真に比べて放射線に対する感度が高く、物質に含まれる微量な放射能分布の測定などに利用されている。(図1)は花崗岩を調べたもので、対比すると岩の白い部分(左図では黒い部分)に色味を帯びた放射性物質が多く含まれていることがわかる。(図2)は野菜を調べたもので、放射性物質を含んだ部分が黄色く浮かび上がっている。いずれも自然界や肥料に含まれる放射性物質の含有を示す。

このように私たちの身近に放射性物質や放射線は存在し、人間は常に放射線を受けています。世界平均でいうと人間は年に2.4ミリシーベルト被ばくしています(図3)。これは地域によって差があり、日本は少し低くて2.1ミリシーベルト程度とされています。

自然放射線から受ける線量

 
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