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Vol.9 環境分析とエネルギー

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これからのあるべき社会の姿とは

高度経済成長期は大量生産・大量消費で自然を犠牲にしてきました。私は、こうした時代は終わりを告げ、すでに自然と人間が共生していく段階に入っていると思います。学校教育に取り入れられているビオトープの取り組みはその一例でしょう。一方、私たちは今さら30〜40年前の生活に戻ることはできません。社会生活のために一定のエネルギーは必要です。

これからの社会におけるエネルギーを考えると、さまざまなエネルギー資源をバランスよくミックスしていくことが大切です。再生可能エネルギーは積極的に推進していくべきですが、これですべてのエネルギーがまかなえるわけではありません。都市部が必要とする大量の安定した電力供給のためには、火力や原子力などのエネルギー源が欠かせません。

エネルギー密度の低い再生可能エネルギーについては、地域によって補完的なエネルギー源として利用することが望ましいと思います。地域にはそれぞれ特色があります。水資源が豊富であれば水力発電、バイオマス資源が豊富であればバイオマス発電など、地域に合ったエネルギーの形を取り入れていくべきでしょう。

エネルギーの正しい知識を得ることの大切さ

あるとき大学生の意見を聞く機会がありましたが、学生たちの多くは原子力発電を停止し、再生可能エネルギーでまかなうべきだと考えていました。これは東京電力福島第一原子力発電所事故の影響が大きいと思います。確かに再生可能エネルギーでは放射性物質の管理は不要ですが、例えば風力発電では、バードストライクや騒音、低周波音などの課題があるほか、発電コストや製造時におけるCO2排出についても考える必要があります。

また東京電力福島第一原子力発電所事故の際には、当協会にも放射能についてたくさんの問い合わせがありました。中には「福岡の自宅の井戸水は大丈夫でしょうか?」「北海道から送られてきた食べ物は大丈夫でしょうか?」という問い合わせもありました。これらは正しい知識を持たないがゆえに、放射能をむやみに怖がっている事例だと思います。

何が良くて、何が悪いのか、答えは決してひとつではないと思います。けれども、まずはエネルギーについて正確な知識を持ち、その上で選択することが大切です。私にできることは大きくありませんが、ひとりでも多くの人に環境やエネルギーに関する正しい知識を伝えていきたいと考えています。楽しく学び、正しく理解した上で、どうするべきかを考えてほしいと思います。

 
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