九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.10 放射性廃棄物の処分方法について考える(2/3)
原子燃料を再処理して、最終的に残るものが高レベル放射性廃棄物です。この処分方法は、現在では地中深くに埋める地層処分が国際的に認知・採用されています。地層処分にいたるまでには、他にもさまざまな方法が検討されました。具体的には、宇宙処分、海洋底処分、氷床処分、さらに地上での長期管理があります。
宇宙処分はロケットなどで廃棄物を打ち上げる方法ですが、打ち上げが成功するかどうかのリスクが高く、コストもかかります。
海洋底処分は比較的安全でコストもかからない方法ですが、一度投棄してしまうと回収が困難なこと、また廃棄物の海洋投棄をロンドン条約で禁止していることから基本的に実現不可能です。
氷床処分は南極の氷の奥深くに閉じ込める方法ですが、気候変動の影響で氷が溶けてしまう危険性があり、南極条約によって守られている南極を汚してしまう可能性があります。
さらに数万年の時間が必要な地上での長期管理は、自分たちが出した廃棄物を後の世代に押し付けることになるほか、人が管理し続けることの実現性などの問題があります。
最終的に選ばれた地層処分は、地下深い安定した岩盤は物質を閉じこめるのに適しているなどの特長があるほか、今の技術で実現が可能な優れた処分方法なのです。
高レベル放射性廃棄物の処分は、環境が安定していて人がアクセスしやすい場所が理想です。海洋底のように回収できない場所だと何かあったときに対応できません。さらに数万年という単位で安全を担保する必要があります。それにもっとも適しているのが地層処分なのです。
地下は非常に安定した環境で、モノの変化が少ない場所です。表面は造山運動で変化していますが、少し掘ると2000万年前、2億年前の地層がすぐに出てきます。さまざまな化石や遺物が出てくるのも、地下がモノを保存するのに適した場所だからです。また酸素がないため、鉄製の容器などが腐食しにくいというメリットもあります。
日本で地層処分というと火山や地震を心配する人がいます。そうした課題も、もちろん検討しています。現在の火山や以前の火口などマグマが貫入しやすい場所からは一定の距離をとり、また地震を起こす活断層からも一定の距離をとることになっています。そもそも地震は、地下では案外揺れないのです。20世紀最大の被害を出した1976年の中国・唐山地震では、24万人もの方が亡くなったとされていますが、震源地に近い地下深くの炭坑の中にいた人たちの中には、揺れが小さかったこともあり、亡くなった方はいらっしゃいませんでした。