九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.10 放射性廃棄物の処分方法について考える(3/3)

 
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Vol.10 放射性廃棄物の処分方法について考える

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科学的特性マップと処分場の選定作業

現在、日本では高レベル放射性廃棄物の最終処分場を決めるための調査を行う場所を選定する作業が行われています。2017年に公表された「科学的特性マップ」も、この作業の一貫です。先ほどお話ししたような火山や活断層のほか、資源の有無などの特性を調べてマップに示しています。資源の有無は地質そのものには影響はありませんが、そこに石炭や鉄鉱石などの資源があると、人が掘ってしまう可能性があるため最終処分場選定にあたっては重要な項目です。

科学的特性マップが出たからといって、すぐに処分場が選ばれるわけではありません。あくまで地質の状況などを地図上に示しただけです。まずは「科学的特性マップ」を契機に多くの人に関心を持ってもらい、地域で話し合ってもらうことが重要です。国や地層処分を実施する原子力発電環境整備機構(NUMO)は、そのための説明会を現在各地で行っています。

自治体が調査を受け入れても、それで処分地に決まるわけではありません。その後、さまざまな調査が行われます。まずは文献調査。文献や伝承を調べて、その地域に問題がないかどうかを確認します。次に概要調査。実際に地面に穴を掘り、地質の調査を現地で行います。最後に精密調査。地下深くに調査施設を造って、断層や岩盤の性質、地下水の成分などを詳しく調べます。これらの各調査で的確な場所であることを確認し、その都度、地域の了解をもらい、最後の了解をもらった上で、初めて処分場が建設されるのです。

最終処分法で定められた選定プロセス

放射性廃棄物の危険性を正しく知る

出光先生

最終処分場の建設に反対の人もいますが、自分たちで出したゴミは自分たちで片付けるのが原則です。それは原子力発電によるゴミであろうと、日常のゴミであろうと同じです。現在、国際法の規定でゴミを輸出することはできません。国内で出たゴミは国内で処分しなければならないのです。

反対する人たちは放射性物質の危険性を指摘します。事業者も危険なものであることは分かっています。その上で、科学的に安全を追求した最適な処分方法が地層処分なのです。むしろ放射性廃棄物をそのまま放置しているほうが、ずっとリスクが高いのではないでしょうか。何が危険で、何が危険でないのか、正しく知った上で怖がる必要があります。

そして、私たちの世代のつけを子どもたちに残さないためにも、この問題を自分たちのこととして考えてほしいと思います。

 
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