• 印刷

Vol.15 電気エネルギーの可能性

1 / 2 / 3 / 4

電源の低炭素化と電化の推進によるCO2削減

いま社会の低炭素化・脱炭素化へ「電気」が果たす役割が非常に重要となっています。日本は、2016年に発効したパリ協定でCO2など温室効果ガスの排出量を2013年比で2030年に26%削減、2050年には80%削減することを公約しています。この目標達成に向けては水素やカーボンリサイクルなどの技術的イノベーションが求められていますが、今すぐにできることとして再生可能エネルギーや原子力発電による電源の脱炭素化の推進とセットで、実用段階にある電化技術の普及を図っていくことも必要です。運輸部門ではEV、PHVの開発・普及、産業部門では製造プロセスの電化への転換、民生部門では空調・給湯のヒートポンプ利用など、家庭や工場といった最終エネルギー消費における電化の割合を高めることで、化石燃料の消費を削減することができ、CO2削減に大きく貢献できます。

経年劣化した設備のメンテナンスが課題

そうした電気について最も大切なのは「安定供給」です。台風など自然災害による停電を経験された方もいらっしゃると思いますが、現在の生活では電気がなくなると何もできないのが実情です。この電気は電線(送電線や配電線)によって届けられます。発電所から家庭まで膨大な長さの電線でつながっているのです。

これからの電気の安定供給で大きな課題となるのが送配電設備の保守管理です。日本は電力需要の増加に合わせて設備を拡充し、適切なメンテナンスを行うことで電気の品質を維持し、世界的に見ても停電の少ない国となっています。

しかし、日本では設置から30年以上経過した送配電設備が多くあり、設備の適切なメンテナンスを行わないと、鉄塔や電柱の倒壊、漏電などの事故が発生し、大規模停電につながりかねません。

電力システム改革による競争の本格化、「発電・小売部門」と「送配電部門」の分離など、電気事業を取り巻く環境は大きく変化し、電気料金を最大限抑制することが求められていますが、安定供給を維持するためには適切なメンテナンスが欠かせません。とはいえ全国の膨大な設備を今すぐ更新するのは不可能です。どの設備をどの程度、いつ更新すればいいのか的確に判断し、優先順位をつけてメンテナンスをやっていく必要があります。そのためには、ICT、AI、センサー、ロボット技術などを活用した効率的なスマートメンテナンスの技術開発が期待されています。

また、分散型電源の拡大やデジタル化への対応、災害に強い電力供給設備の構築など新たな課題に対する取組みも必要となっています。

主要国の停電時間推移

 
ページの先頭へ戻る