• 印刷

Vol.16 原子力の役割と安全性の追求

1 / 2 / 3 / 4

安全性を遵守した上での原子力の活用

将来においても重要な原子力発電ですが、さまざまな課題もあります。2011年の東日本大震災前は54基が稼働し、電力の約30%を賄っていましたが、震災後に制定された厳しい新規制基準のもとで検査に合格し再稼働しているのは9基にとどまっています。一方で、新規制基準への対応が難しい原子炉は廃炉となっています。その結果、日本のエネルギー自給率は、震災前の約20%から現在は12%ほどに低下しました。また、新規制基準では運転期間を40年と定め、1度限り20年の延長が認められていますが、今後、運転開始から40年を迎える発電所の運転期間を延長するかどうかも課題になります。

エネルギーミックスを実現するためには、原子力の利用は必要であり、安全確保を大前提に、新規制基準に合格した原子力発電所を稼働させるのが望ましいと考えます。安全性確保のために重要なことは、独立した組織である原子力規制委員会(NRA)で新規制基準にもとづく厳格な検査を行い、事業者も安全についての不断の取組みや安全性向上を目指した技術開発を続けていくことです。原子力発電所が立地する地域の理解と協力、地域との共生も欠かせませんし、万一に備えた避難計画なども重要だと思います。

原子力の利用にあたっては、使用済燃料の再処理や処分など、バックエンドシステムの確立も重要な課題です。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定については、2020年、北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)で文献調査が始まりました。これは、対象となる地域の地形図や文献などを机上で調査するもので、地域の方々の議論を深める説明会なども実施されます。文献調査後の概要調査に進むかどうかは改めて地域の意見を聞くことになっています。これを機に日本全体で処分事業への関心が高まることを期待していますし、引き続きバックエンドシステムについての様々な取組みを着実に進めることが重要だと考えます。

高レベル放射性廃棄物最終処分場選定のプロセス

 
ページの先頭へ戻る