情報誌「TOMIC(とおみっく)」

46号 2012年10月発行(2/4)

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澤 昭裕氏が語る「いま、なにを議論すべきなのか?」-エネルギー政策と温暖化政策の再検討-

再生可能エネルギーへの過剰な期待

私が1981年に役所に入った頃、資源エネルギー庁で作っていた長期エネルギー需給見通しが役所を辞める2006年頃にようやく実現できたといったように、エネルギー政策の実現には、大変長い年月がかかるというのが特長です。

家庭部門におけるCO2削減目標

現在議論されているエネルギー政策は、鳩山政権が打ち出したCO2を1990年に比べて、2020年までに25%削減するという目標がベースとなっています。家庭部門で見てみますと、1990年から2010年までにエアコン、テレビなど家電製品の増加により、CO2が3割増えています。この目標を守ろうとすると、エネルギー消費をほぼ半減させる必要があります。普通の節電では到底追いつけるものではありません。

このように、省エネでは達成できないため、CO2を出さない原子力発電を増やし、再生可能エネルギーも増やすしかないということを結論づけたわけです。それでも、2020年に20%の削減は難しいので、2030年まで延ばす代わりに30%まで削減するという絵を描きました。これが現在のエネルギー基本計画のもとになっています。

元々この計画は、化石燃料を減らすためのものでした。しかし、原子力が現在のような状況になったため、再生可能エネルギーに期待が二重にかかり始め、単に化石燃料を減らすだけではなく、原子力も減らす実力をつけさせたいと皆が思い始めたわけです。

原子力や石炭、LNG、水力などは、電力会社が自分の電源開発計画の中で、いつまでにどのくらいの規模のものを運転開始しますということを自分で約束し、電源の建設を進めていきます。

しかし、再生可能エネルギーというのは例えば、太陽光パネルを日本の住宅1千万戸に乗せます。あるいは、風力については、風況の良い地区の3割を開発できれば何万kWありますという言い方をするわけです。従って、1千万戸の住宅に太陽光パネルを乗せますという時には、各個人宅の了解を取ったうえでのことでもなく、具体的な計画が無いわけです。つまり、気合だけの計画なのです。ということは、太陽光が1千万戸できずに、100万戸で終わった場合に、誰が責任を取るのかという問題に帰着します。

今もっとも重要なのは3〜5年先のエネルギー政策

エネルギー基本計画の見直し案では、3つの選択肢が示されており、選択肢1が原子力をゼロにする。選択肢2は原子力を15%、つまり、科学的に正しいかはともかく、40年超えた原子炉は廃止にしていくというものです。選択肢3は原子力を20〜25%、このシナリオは原子力の新設については何らかの形で認めていくというものです。

この中の原子力を進める選択肢3においても3割程度は再生可能エネルギーで賄おうとしていますが、これは実現できないと思います。

今回の計画は、エネルギー政策基本法に基づいて作られたものであり、法律上、3年に1度見直すことになっています。今一度決まっても、3年後や6年後に見直すべきです。

また、現在の議論では、20年先の2030年の話はしているけれども、3、4年先にどうなるかが見えてこない。企業にとって投資計画や雇用計画などの経営判断に最も重要なのは、3〜5年先の話であり、この間のエネルギー政策が見えてこないと、中期の計画が立てられません。政府も政府関係の審議会も、誰も3、4年先の話をしてくれない。ここが現在議論する中で最も重要にもかかわらず欠けている部分です。

3つのシナリオの比較

 
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