情報誌「TOMIC(とおみっく)」

47号 2013年1月発行(4/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 日本経済の再生に果たすエネルギーの役割〜原子力再稼働に向けて〜

原子力に求められる更なる安全性の追求

福島第一原子力発電所の事故以降、学会、技術者そして電気事業者も含めて、安全性という面で非常に反省し、あの事態に至った技術的な瑕疵とは何かを考え、その対策に最優先で取り組んでいます。

津波影響の試算結果<表-1>

発電所は、想定される地震動や津波の規模、確保できる水の量など、地域毎に特徴があるため、全てを福島第一と同じには考えず、個々に見ていくことが肝心です。規模が大きい地震はプレート境界で起こります。また、津波は水深が深いと規模が大きくなる性質があります〈図-@〉。先日伺った川内原子力発電所を例にあげますと、川内は、プレート境界がなく、海も非常に浅いので、津波の高さは最大で3.7mほどと計算されています。敷地は元々13mの高さにあるため、それだけでも安全ですが、さらに浸水防止、非常電源や水源の確保など様々な安全対策がとられています。余裕に余裕を重ねているので、福島第一と同じことが起こるとは言えないのです。玄海もこれに近い状況です。〈表-@〉

今回、政府の事故調査委員会などで、福島の事故は人災だったとの声が聞かれました。福島第一に近い女川原子力発電所と福島第二原子力発電所が災害に耐えたのに、福島第一だけが被害を受けてしまった。それはなぜかというのが問われた訳です。

原子力発電所は、安全性を高めるために想定事象を考えて設計がなされますが、現在は想定を超えても大丈夫なだけの安全性が求められています。女川は事前に想定されていた津波が9.1m、対する敷地の高さは10mでしたが、東北電力はさらに4〜5mかさ上げして建設しました。今回13mの津波がきましたが、この判断が功を奏し、津波に耐えることができたのです。

この女川の例に見られるように、念のための措置をとっていたところは災害に耐え、とらなかった福島第一だけがあの事態に陥ったのです。基準となる安全設計をさらに超えて、十分な余裕をもった対策をとり、終わりなく手を尽くすことが大切です。一つひとつの積み重ねが原子力発電所の安全性を高め、市民の安全を確保する材料になっていくのです。女川や福島第二のように手をつくしていけば、福島第一のようなことは起こらないと、私は思います。

日本近海における主要津波の波源域と日本周辺いおけるプレートとその境界<図-1>

山名 元氏

京都大学原子炉実験所
教授・工学博士 山名 元
(やまな はじむ)

1953年京都府生まれ。76年東北大学工学部卒業。81年東北大学大学院工学研究科博士課程修了。動力炉・核燃料開発事業団(現、日本原子力研究開発機構)を経て、96年京都大学原子炉実験所助教授に就任、2002年より現職。原子力安全委員会審議会委員。著書に『間違いだらけの原子力・再処理問題』、共著に『それでも日本は原発を止められない』など。

 
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