九州エネルギー問題懇話会トップページ情報誌「TOMIC(とおみっく)」TOMIC48号(3/4)
48号 2013年10月発行(3/4)
A.原子炉を止めるには、制御棒を原子炉内に挿入する必要がありますが、PWR型の場合、制御棒は上部から挿入する形になっていますので、万一電源がない場合にも、重力で自然落下し、完全に停止することができます。
しかしながら、原子炉の崩壊熱は、停止後1時間を経過しても運転中出力の100分の1を上回っており、原子炉が停止しても、冷却水を循環させ、原子炉内を冷却する必要があります。
PWR型の特長としては、蒸気発生器(SG)で発生した蒸気で稼働するタービン動補助給水ポンプを備えているため、電源が失われても、このポンプにより冷却水をSGに送り込むことで、原子炉内で一次冷却水の自然対流が起こり、原子炉内を冷却することができます。
SGに送り込む冷却水には放射性物質が含まれないため、SGで発生した蒸気を大気中に放出することができますので、冷却水を継続してSGに送り、長期にわたって炉心を冷やし続けることができます。(図2)
また、福島第一でもう一つ問題となった使用済燃料プールの冷却についても、PWR型の使用済燃料プールは地盤面と同じレベルに設置されていますので、給水も比較的容易に行うことができます。(図3)
A.福島第一では、原子炉内の冷却機能が失われたことから、高温となった燃料被覆管のジルコニウム等が水と化学反応を起こして発生した水素が原子炉圧力容器から原子炉格納容器、原子炉建屋へと漏れ出し、1、3号機においては高濃度となった水素が「爆轟(ばくごう:気体の急速な熱膨張の速度が音速を超えて衝撃波を伴いながら燃焼する現象で、極めて破壊力が大きい。)」を起こしたと考えられています。
PWR型でも同様のことが起きるのかということですが、ここで鍵となるのは原子炉格納容器の大きさの違いです。福島第一で採用されているBWR型は、原子炉圧力容器を囲う原子炉格納容器がコンパクトです。それに対してPWR型の原子炉格納容器は巨大で、その体積は福島第一のものに比べ、約10倍の大きさがあります。そのため、過酷な事故が起きたときにジルコニウムと水が反応して水素が発生したとしても、水素爆轟が発生することはないと考えています。(図4)
また、今回新基準に沿って、外部電源を使わずに水素を水蒸気に変換する触媒式水素再結合装置(PAR)の設置が義務付けられるなど新たな安全対策も実施されますので、水素爆轟への対策は更に万全なものになったと考えています。(図5)