九州エネルギー問題懇話会トップページ情報誌「TOMIC(とおみっく)」TOMIC49号(2/4)
49号 2014年3月発行(2/4)
米国のLNGが日本にやってくるのはまだ少し先の話になりますが、間接的ならば、日本は既にシェールガスの恩恵を受けていると言えます。
2011年3月、日本は東日本大震災に見舞われ、それによって国内のほとんどの原子力発電所をストップさせる事態が発生しました。これによって国内のエネルギー供給にぽっかり穴が開いたのです。この穴を埋めたのが、シェール革命によって米国が輸入を控えたために行き場を失っていたLNGでした。
2011年の日本のLNG輸入状況を見てみますと、カタール、ナイジェリア、赤道ギニアといった米国へのLNG輸出を計画していた国々からのLNG輸入が増加していることが分かります。〈図-3〉
もし米国にシェール革命が起こらず、米国がLNGを輸入する状況だったならば、LNGの需給は逼迫し、今の比ではないくらいに高騰していたかもしれません。
米国からのLNGの輸入については、日本の電力会社や都市ガス会社などが、輸入の実現に向けて具体的に動き出しており、早ければ2017年から輸入が始まります。現在計画されているプロジェクトから日本企業が確保している数量は、併せて年間1,700万トンで、日本のLNG輸入量の約2割に当ります。
国際的にガス価格は100万BTU(英国熱量)あたりのドル換算で示されますが、現在日本が購入しているLNG価格は100万BTUあたり16ドル程度です。
米国内のガス価格は現在4ドル程度ですが、これをLNGにして日本に持って来る場合、液化費用や輸送費用などの各種コストが加わり、10〜12ドルくらいになるのではないかと言われています。米国の国内価格よりは随分跳ね上がりますが、現在日本が購入しているLNGよりは、割安になります。
但し、日本が購入しているLNG価格は、原油価格に連動していますので、原油価格が下がってくるようなことがあれば同じくLNG価格も下がり、今安いと言われている米国のガス価格と逆転するようなことも起こり得ます。
実際、米国の天然ガス価格の指標となるヘンリーハブ価格が日本のLNG価格より高くなった時期が、2000年代の半ばくらいにありました。〈図-4〉
しかし、米国産LNGの輸入の実現は、日本のエネルギー供給源の多様化にも繋がりますし、米国産LNGの価格がまた別の契約や他のエネルギーの価格や交渉にも影響を与え、安いエネルギーを選べる余地が生まれやすくなるのではないかと思います。
また、現在パナマ運河の拡張工事が2015年の完成を目指し進められており、完成すればLNGの大型船の通行も可能とるため、日本までの輸送時間の短縮や輸送コストの低減が期待されています。