情報誌「TOMIC(とおみっく)」

50号 2014年10月発行(3/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2014年 第50号 九州エネルギー問題懇話会 将来に繁栄する社会を築く エネルギー選択の岐路に立つ日本

脱原発・再生可能エネルギーの先進性で注目を集めるドイツの実情

ドイツは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの買取制度を導入するなど、再生可能エネルギーの普及促進を積極的に進めていますが、再生可能エネルギーの総発電量に占める割合は約2割で、うち太陽光は5%弱に留まっています。

一方、太陽が照らなかったり、風が吹かないなど再生可能エネルギーが発電できない場合の電力を補うために、国内産の褐炭を使った石炭火力の稼働を増やさざるを得ず、電力の半分近くが石炭火力となってCO2の発生が増えています。また、原子力発電も9基がまだ稼働しており、総発電量の15%をしっかり賄っています。〈図-5〉

〈図-5〉ドイツの電源別電力構成(2013年)〈図-6〉電気料金の国際比較

ドイツの電気代は、再生可能エネルギーの買取制度の導入などにより、ここ10年で2倍に跳ね上がっており、2014年8月には、法律が見直され買取制度が縮小されることになりました。ドイツでは産業用の電気代は家庭用に比べて電気代を安く設定していますが、それでも他国と比べて高いため、ドイツ企業の中には、国際競争力を維持しようと、電気代の安い隣国のチェコの国境沿いに工場を移転する企業も多く出てきました。チェコではドイツからの企業の移転に伴う電力不足を補うために石炭火力発電所を増設したことから、国境を越えてCO2や排煙などがドイツ国内に流れ込む状況となっています。〈図-6〉

このように、再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)を進めるほど二酸化炭素が増え、他国で大気汚染が引き起こされるなどこの状況は“グリーンパラドックス”とも呼ばれています。

これまで、ドイツは世界をリードする形で、再生可能エネルギーの普及を進めてきましたが、電気料金の高騰など様々な課題を抱えているのが現状です。また、ドイツは2022年までに原子力発電を全廃する計画をもっていますが、この政策は見直さざるを得ない状況に追い込まれてきました。ドイツにおけるこの脱原発政策の失敗を、今後の我が国のエネルギー政策の舵取りにも反映する必要があると思います。

原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物の処分場の決定は国民の合意形成が第一

〈図-7〉高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵概念図〈図-8〉高レベル放射性廃棄物最終処分概念図

原子力発電の大きな課題の一つとしてあるのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題です。

日本では、原子力発電で使用された使用済燃料は、再処理を行い、リサイクルできるウランやプルトニウムを取り出しています。この再処理過程で残った物質を高レベル放射性廃棄物といい、同廃棄物は、ガラスに溶解させてステンレス容器に流し込んで固めています。これをガラス固化体と呼びますが、現在、このガラス固化体は青森県六ヶ所村の施設に冷却するため一時保管されています。〈図-7〉

高レベル放射性廃棄物は、最終的には地下へ埋設処分する計画ですが、埋設処分場をどこにするかという問題があります。

しかし、六ヶ所の例にもあるとおり高レベル放射性廃棄物は、陸上で40年以上に渡って安定的に一時保管することもできますので、最終処分については慌てる必要はないと私は思います。先行するフィンランドなどの施設の稼働状況や実績をよく見て冷静な議論を繰り返し、時間をかけて国民の合意形成を図っていく必要があると思います。

 
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