情報誌「TOMIC(とおみっく)」

50号 2014年10月発行(4/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2014年 第50号 九州エネルギー問題懇話会 将来に繁栄する社会を築く エネルギー選択の岐路に立つ日本

日本にあったエネルギーベストミックスの実現

奈良林教授

国民一人ひとりが、エネルギー問題を考えるにあたっては、正しい情報をみんなで共有することが重要です。

原子力発電については、福島第一の事故原因や、その後の安全対策などについて、国が国民に向かって正確な情報を伝える必要があります。また、我が国の今後の原子力発電のあり方について、国として明確な方向性を示すことも必要です。

近年、原子力に代わるエネルギーとして、太陽光発電など再生可能エネルギーに注目が集まっていますが、電気代の高騰やグリーンパラドックスを経験したドイツの実態を、我々国民が正しく知っておかなければなりません。

電気は、一般家庭の照明や空調から交通、産業に至るまで利用されており、空気や水と同じように、すべての人が必要としています。電気代の値上がりは、収入が少ない生活弱者に最も負担をかけてしまうことも忘れてはなりません。

また、国のエネルギー政策を考える上で最も重要なことは、その国の置かれた立場を理解することです。ドイツは石炭という豊富な国内資源を持っています。更には、ガスパイプラインや送電線網が他国と繋がっており、ガスや電力も容易に輸入できる環境にあります。資源もなく、島国である日本とは、大きく違います。

私は、エネルギーの安全保障上の観点などからも、日本は一定量の原子力発電を確保しておく必要があると思っています。3.11の教訓を生かし、不断の努力で常に安全性を高める強い意識が原子力発電の稼働・運営に必要です。

「文化」は英語でカルチャーと言いますが、カルチャーには「耕す」という意味があります。額に汗して日本の将来のために原子力発電の安全性を高め、エネルギーを供給し続けることが、「原子力の安全文化」です。

原子力発電の安全を確保し、高効率の火力発電や水力、バイオマスなども活用する日本にあったエネルギーベストミックスの再構築が必要であると私は考えています。

 
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