情報誌「TOMIC(とおみっく)」

51号 2015年3月発行(1/4)

  • 印刷
  • PDF
 

TOMIC第51号 国際エネルギー情勢と日本の課題 グローバル化の中で考えるエネルギーのベストミックス

一般財団法人 日本エネルギー経済研究所常務理事 首席研究員
戦略研究ユニット担当

小山 堅
(こやま けん)

1986年、早稲田大学大学院経済学修士修了。同年、(財)日本エネルギー経済研究所入所。2001年、University of Dundee(UK)よりPhD (博士号)取得。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。エネルギーおよび国際経済に関する著書多数。


昨今の原油価格急落など、今世界ではエネルギー情勢が大きく変動しています。グローバル化する現代社会では、国際的な動向が自国のエネルギー情勢に与える影響がますます大きくなっています。とりわけエネルギー源のほとんどを輸入に頼る日本では、海外の動向は無視できません。
今回は、国際的なエネルギー情勢に詳しい日本エネルギー経済研究所常務理事の小山堅氏に、現在の世界のエネルギー情勢と日本における課題などについてお話を伺いました。

急落する原油価格とその背景

原油価格の推移

原油価格は2014年前半まで100ドル/バレル前後の高値圏で推移していましたが、昨年6月頃から急落し、これまでに5割程度下がっています。

原因の一つは、需要が減速し、原油が市場でダブついているためです。2014年の世界の石油需要の伸びは1日当たり70万バレル弱で、過去5年間で最低の伸び率となっています。中国、インド、ASEANといった新興国の経済の減速やヨーロッパの経済停滞などがその理由です。

一方、供給は順調に増えています。とりわけ非OPECの産出が増えていることが特徴的で、供給増の4分の3がシェールオイル増産に沸く米国です。シェールオイルは中東産原油などに比べて生産コストが高いのですが、3年半も原油の高価格が続いたため、コストのかかるシェールオイルの生産も経済性を持つようになりました。

このように需給バランスが崩れたことで価格の下落が起こったのですが、今まではサウジアラビアを中心としたOPECが需給を調整してきました。原油価格が下がってくると減産して、価格がこれ以上下がらないように下支えしていたのです。ところが昨年11月の総会でOPECは減産しないことを表明しています。つまり原油価格を支える人が誰もいない状況なのです。OPECの盟主、サウジアラビアなどは価格下落が続いても外貨準備高などを取り崩し、ある程度の期間は持ちこたえられます。この間に、コストの高い石油を淘汰しようという考えなのです。

 
ページの先頭へ戻る