情報誌「TOMIC(とおみっく)」

51号 2015年3月発行(3/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2014年 第51号 国際エネルギー情勢と日本の課題 グローバル化の中で考えるエネルギーのベストミックス

地政学的なリスクをはらむ中東やウクライナ情勢

小山 堅氏

地政学的な不安定要因をはらむ中東、ロシアといった地域は、エネルギー供給の中心地でもあります。そのため、これら地域での政情不安は国際エネルギー情勢にも大きな影響を与えます。

欧米諸国にとって「ウクライナ情勢」は、日本で考えられている以上に深刻な問題です。ロシアの「力による現状変更」を認めない欧米が、対ロシア経済制裁を強めて出口が見えない状態が続いています。

ロシアで生産される石油やガスの多くはヨーロッパへ輸出されています。ヨーロッパとしてはロシア産のエネルギーは大変重要なエネルギー源なのですが、今回の問題で、ヨーロッパはエネルギーにおける対ロシア依存度を下げようとしています。

このため、ヨーロッパでは、供給源の多様化やそのためのインフラ整備にも力を入れており、コストがかかってもヨーロッパ全体で乗り切ろうという姿勢です。

ロシアとヨーロッパを結ぶ主な天然ガスパイプライン

一方で、このところの原油価格の下落とロシアへの経済制裁は、ロシア経済に大きな影響を与えており、ロシアの2015年の経済成長率は▲5%になるとの予想も出てきています。こうしたことから、ロシアは東に目を向けるようになり、中国に急速に接近しています。

ロシア・ウクライナや中東における地政学的な不安定要因は、予測が困難であり、抜本的解決も容易でありません。何か突発的な出来事が起これば、緊張関係が一気に緊迫する恐れがあり、世界のエネルギー情勢にも大きく影を落とします。

 
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