情報誌「TOMIC(とおみっく)」

51号 2015年3月発行(4/4)

  • 印刷
  • PDF
 

エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2014年 第51号 国際エネルギー情勢と日本の課題 グローバル化の中で考えるエネルギーのベストミックス

ベストミックスが求められる日本のエネルギー

OCED諸国の一次エネルギー自給率比較(2012年)

日本はエネルギー消費が世界5位と、世界有数のエネルギー消費大国です。これほどの消費国であるのに、国内にエネルギー資源をほとんど持ちません。エネルギー自給率は水力や新エネルギーを合わせても6%程度で、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料のほぼすべてを輸入に頼っており、国際エネルギー情勢に左右されやすい国なのです。

ヨーロッパもエネルギー資源を持たない地域ですが、島国である日本とは違い、大陸なのでヨーロッパという共同体で助け合うことができます。

日本の厳しいエネルギー問題に拍車をかけたのが東日本大震災と原発事故でした。それまで電力の3割程度を原子力で賄っていたのですが、震災以降は各地の原発が徐々に止まり、現在はゼロになっています。原発が止まったからといって電力需要がなくなるわけではありません。不足した供給分を、ありとあらゆる手段で賄っているのが現状です。

小山 堅氏

当然ながら天然ガス、石油、石炭といった化石燃料の輸入を大幅に増やして発電しており、それが大きな経済的負担となって日本経済を貿易赤字の悪化などで苦しめています。また化石燃料の増加は環境問題にも悪影響を与えています。日本が排出するCO2は基準年の1990年に比べて大幅に増えており、環境問題はエネルギーとセットで考えていかなければなりません。

今後も日本は経済大国としてエネルギーを使い続けることに変わりありません。その中で環境にも調和した社会を創るためには、エネルギーのベストミックスが重要になると思います。どんなエネルギーにも強みと弱みがあり、それぞれの弱みの克服を図りながら、どう最適に組み合わせるかが重要なのです。例えば原子力には安全性という課題があり、再生可能エネルギーにはコストや不安定性という問題があります。いずれか一つのエネルギー源だけですべてを賄うのは難しいですが、それぞれの長所・短所を理解してバランスよく利用することが必要です。

日本の経常収支・貿易収支・鉱物性燃料輸入額の推移

昨年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」にも、原子力は重要なベースロード電源であることが明記されました。また、さまざまなエネルギー源を活用していくベストミックスの考え方も反映されています。エネルギーのインフラ(発電所など)は計画から実際に実現できるまでに10〜15年といった長い年月を必要とします。2030年のCO2削減目標を達成するためにも、ベストミックスを活用した日本のエネルギーのあるべき姿を早急に描き、社会全体で共有していくことが大切です。

 
ページの先頭へ戻る