情報誌「TOMIC(とおみっく)」

53号 2016年3月発行(3/3)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2016年 第53号 低レベル放射性廃棄物の処理・処分 〜次の世代へ先送りせず、自国の廃棄物は自国で処分する〜

高レベル放射性廃棄物は深地層処分で対応

これまで見てきた低レベル放射性廃棄物とは違い、高レベル放射性廃棄物はピット処分が行われる低レベル放射性廃棄物より数万倍から10万倍も放射能レベルが高いのです。また半減期が長いものも多く、ものによっては数百年、数万年、あるいは100万年以上も放射能が減らないことがあります。これだけの長い期間を人の手で管理することはとてもできません。不用意に人が近づけないよう、数万年という単位を安全に保管することができるように、これらは地下300メートルよりも深い場所で地層処分されることになっています。

はじめに述べた放射性物質を閉じ込めたガラス固化体をオーバーパックと呼ばれる頑丈な金属製の容器に完全密封し、さらにその周囲に地下水を通しにくい粘土質の緩衝材を詰めることによって、容器が壊れた場合も放射性物質の移動を制限しています。

高レベル放射性廃棄物の地層処分については次号でより詳しくご説明したいと思います。

自国で出た放射性廃棄物は自国で処分する

放射性廃棄物の処分については大きな原則があります。それは「自国で出た放射性廃棄物は自国で処分する」というものです。ですから現在日本にある放射性廃棄物はもちろん、今後出てくる廃棄物も日本で処分しなければなりません。使用済み燃料を廃棄物とみるか資源とみるかの考え方は国によって異なります。再処理を行なわず一度使った燃料をそのまま処分する国もあります。実際、再処理した方が、コストが高いとも言われています。

けれども日本は資源に乏しい国です。再処理すれば新たなウランの輸入を減らすことができ、エネルギーセキュリティ上もより安全です。現在、日本には17,000トンの使用済み燃料が保管されていますが、これらをすべて再処理すれば、東日本大震災前に使われていたウラン燃料の4年分相当の燃料に生まれ変わります。資源の再利用という観点から再処理は重要なことだと考えています。

日本で発生した使用済み燃料の一部はフランスやイギリスに再処理をお願いしており、処理は終わっています。回収されたプルトニウムの一部は既にMOX燃料に加工され日本に戻ってきていて、原子炉で発電に利用されています。また、この再処理によって発生した放射性廃棄物も発生国での処分のため、日本に戻ってきているところです。

放射性廃棄物の輸送にも細心の注意

最後に使用済燃料などの輸送についてお話しておきたいと思います。発電に使い終わった使用済燃料や放射性廃棄物の輸送は基本的に船で行なわれます。専用の輸送車両や輸送船があり、さらにキャスクと呼ばれる特別仕様の専用容器に入れて運ばれます。

使用済燃料輸送用のキャスクは鋼鉄製の容器で重さは100トン以上あります。内部の放射性物質が漏れないように何重にも密閉し安全な遮へい機能を設けたり、発生する熱を放散するためのフィンなどが取り付けられています。また強い衝撃にも耐えられるように設計されており、厳しい落下試験や耐熱試験も実施されています。

使用済燃料(専用容器キャスク)の輸送

実際に飛行機をぶつけるような試験も行なわれており、列車とぶつかっても列車が壊れるほどの頑丈さです。

このように輸送についてもさまざまな安全策を講じた上で行われており、これまでに輸送中の事故が起きたことはありません。いかに細心の注意を払っているかがお分かりいただけると思います。

[次号予告]次号は引き続き出光一哉氏に「高レベル放射性廃棄物の地層処分」についてお話を伺います。より具体的な処理の内容に加え、なぜ地層処分が選ばれたのかについてもお聞きします。

 
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