情報誌「TOMIC(とおみっく)」

58号 2018年10月発行(2/4)

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TOMIC第58号 電気の品質と再生可能エネルギー〜再生可能エネルギーで電気が不安定になる!?〜

電気の品質を保つための取り組み

日本では、九州や四国などの地域ごとに送電網を電力会社が管理しています。発電には、水力、火力、太陽光、風力、原子力などがありますが、発電の仕組みや使用するエネルギー源の違いなどでそれぞれに特徴を持っており、電力会社ではこれらの発電を最適に組み合わせて、発電量と消費量が一致し、適正な電圧・周波数となるよう運用しています。

また、北海道から九州まで送電網はすべて連結されており、域内の電気が不足したり余ったりした場合には、電力会社のエリアを越えて融通を行っています。

電気の広域運営イメージ

日本の電気の品質は世界トップレベルで、常に安定した電気を供給し、停電もほとんどありません。ところが、近年は電気の発電量と消費量のバランスに影響を及ぼす新たな課題が生まれてきました。それには再生可能エネルギー(以下再エネ)の大量導入が関係しています。

Pickup Column
●北海道胆振東部地震によるブラックアウト

平成30年9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震では、震源地に近い北海道電力苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(北海道勇払郡厚真町)が地震の影響により損壊し、発電を停止しました。苫東厚真火力発電所(最大出力165万kW)は地震発生当時、北海道全体の約半分の電力を供給していたため、北海道内の発電量と消費量の需給バランスが崩れ、周波数が大きく低下しました。その影響により北海道内の他の発電所も次々と停止し、離島を除く北海道全域での停電となりました。

電気の発電量と消費量のバランスが大きく崩れると、設備の損壊を避けるために他の発電所も次々と停止し、最終的に全ての発電所が停止する、いわゆるブラックアウト(広域停電)が起こります。現在、北海道胆振東部地震によるブラックアウトの詳細な原因などについては検証が行われています。

再生可能エネルギーの特徴

九州本土における太陽光発電の接続量の推移

太陽光発電や風力発電などの再エネは、国産エネルギーであり、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギー源であることから積極的に導入が図られてきました。とくに、平成24年の固定価格買取制度の導入以降は飛躍的に普及しました。

しかし、再エネは発電量が天候などの気象条件に大きく左右され刻々と変化する不安定な電源です。そこで、再エネの発電量の変化をカバーし発電量と消費量を一致させるために、比較的出力調整が簡単な火力発電などで調整したり、揚水発電で水を汲み上げることによって電気の消費量を増やしたりする対応が必要になってきます。

また、再エネは電力の逆潮流という現象も生み出しています。電力システムは基本的に発電所から一般家庭や工場などの利用者へ、一方向に電気が流れていくことを前提に作られてきました。ところが、再エネが普及したことによって一般家庭などでも発電できるようになり、ここで作られた電気が余り、本来は電気を送るはずの配電系統に、逆に電気が送り込まれて電圧が上昇し、適正な電圧範囲(95V〜107V)を逸脱する恐れがあります。そのため電力会社では自動電圧調整器の設置など電圧上昇を抑える取り組みを行っています。

太陽光発電が大量に普及した場合の電気の流れ

 
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