情報誌「TOMIC(とおみっく)」

58号 2018年10月発行(3/4)

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TOMIC第58号 電気の品質と再生可能エネルギー〜再生可能エネルギーで電気が不安定になる!?〜

再生可能エネルギーの大量導入で起こっていること

現在では、再エネが大量に発電するようになり「電気をつくり過ぎてしまう」状況が生まれています。夏や冬など冷暖房が必要であり全体の需要が大きい季節はあまり問題になりませんが、気候の良い春や秋など冷暖房需要があまりなく全体の需要が小さい季節では発電量が消費量を上回ってしまう可能性があります。

発電量が消費量を上回りバランスが崩れると電気の安定性が保てません。そのため、電力会社では発電量と消費量を一致させるために、先にお話ししたとおり火力発電などの出力調整や揚水発電での水の汲み上げで対応してきました。

とはいえ再エネの発電量がいくら大きくなっても、火力などほかの電源を完全に止めてしまうことはできません。電気の安定性を保つ意味から火力などの調整電源が必要です。完全に止めてしまうと、需要や再エネの出力の変化に対して出力を調整できる電源が大幅に少なくなり、バランスを保つことが困難になってしまうからです。

平成30年5月3日の九州の電力需給実績

九州では今年(平成30年)のゴールデンウィークに再エネによる発電量が需要の93%(太陽光だけでも81%)を占めるという状況が発生しました。これ以上太陽光などの再エネが増えると、これまでの対応では電気の安定性や品質を確保することが難しくなってきます。発電量が過大で調整が必要な時、どの電源をどのような順番で抑制し発電量と消費量を一致させていくかは国の「優先給電ルール」によって決められていますが、すでに上位の対応は実施されており、再エネそのものを抑制するしかない状況です。九州は全国でも再エネの導入がいち早く進んだ地域で、発電割合の20%(平成29年度)といちばん厳しい状況に置かれていますが、程度の差こそあれ他の地域も同じような課題を抱えています。再エネの抑制が現実的なものになっていると認識すべきでしょう。

九州電力の電源構成(平成29年度実績)

Pickup Column
●優先給電ルール

地域全体で電力の供給が需要を上回った場合に、出力を抑制する順番を定めたルール。
① 貯水池式水力の出力制御
② 揚水運転による再生可能エネルギーの余剰電力の吸収
③ 火力発電の出力制御
④ 電力の連系線を活用した広域的な系統運用
⑤ バイオマスの出力制御
⑥ 太陽光・風力の出力制御
⑦ 長期固定電源の出力制御

 
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