情報誌「TOMIC(とおみっく)」

60号 2019年10月発行(1/4)

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TOMIC第60号 各国のエネルギー安全保障への取組みと日本の課題〜これからのエネルギー安全保障を考える〜

一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 研究理事
戦略研究ユニット 担任補佐
国際情勢分析第一グループ マネージャー
久谷一朗
(くたに いちろう)

1995年、早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻修了。
日本鋼管株式会社(現 JFEエンジニアリング株式会社)入社。
2007年、日本エネルギー経済研究所入所。専門は国内外のエネルギー安全保障政策で、特にアジア地域を専門としている。
電力インフラや省エネルギーなどについても研究実績を持つ。共著に「台頭するアジアのエネルギー問題」ほか。


2019年6月に、中東のペルシャ湾の出口にあるホルムズ海峡で日本企業のタンカー1隻を含む船舶が攻撃を受けるという事件が発生しました。日本に輸入される原油の85.9%が、このホルムズ海峡を通過して日本に輸送されていますが、今回の事件は、日本のみならず世界的に、エネルギーの安全保障について考えさせられる出来事となりました。今回はエネルギー安全保障について、日本エネルギー経済研究所・研究理事の久谷一朗氏にお話をうかがいました。

エネルギー安全保障と日本の課題

エネルギー安全保障とは、国民の生活を維持していくために必要な量のエネルギーを、妥当な価格で確保することと言えるでしょう。エネルギー安全保障には、エネルギー自給率の向上、エネルギー源の多様化、輸入先の多様化、利用効率の向上(省エネ)、備蓄の拡大などが必要です。

しかし、日本はいろいろな課題を抱えています。

まず国内に石油、石炭、天然ガスといった化石燃料がほとんどなく、その大部分を海外からの輸入に頼っています。日本のエネルギー自給率は、2011年に東日本大震災が起こる前までは20%前後の水準でしたが、震災以降、原子力発電所の停止により、2017年でわずか9.6%と先進国の中でも極めて低い状況です。日本の食料自給率も低いことが問題視されています(2017年カロリーベースで38%)が、エネルギー自給率はこれよりはるかに低いのです。

エネルギー自給率の推移

また、化石燃料の輸入相手国にも偏りがあります。石油は、約87%が中東地域に、石炭は、約72%がオーストラリアに依存しています。一方LNG(天然ガス)は、オーストラリアやマレーシアなど多様な地域から輸入しています。

日本の化石燃料輸入先(2018年)

そのほか、日本は島国で他国との物理的な送電線やガスパイプラインといったエネルギーインフラの接続がなく、相互のエネルギーの融通が難しいこと、世界と比較して再生可能エネルギーのコストが高いこと及び準国産エネルギーである原子力については国民的な合意形成が進んでいないことなどがあります。

 
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