情報誌「TOMIC(とおみっく)」

61号 2020年3月発行(4/4)

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TOMIC61号 自然災害と電力の安定供給について〜自然災害から電力のレジリエンスを考える〜

皆さんに心がけていただきたいこと

石川智己
石川智己
@災害に対する日頃の備えが大事

自然災害には台風だけでなく、地震などさまざまな現象があります。近い将来に南海トラフ地震が発生する可能性も指摘されていますが、怖いのは台風と地震が同時に起きるような複合災害です。単体での災害よりもさらに激甚化することが考えられるため注意が必要です。

こうした災害の激甚化やほかの災害との複合状況も考慮した事前の調査・研究・対策は重要ですが、電力会社や自治体がすべての被害を的確に予測するのは困難です。2016年の熊本地震では、地震の影響による大規模な斜面崩壊で、水力発電所の貯水槽などが予期せぬ損害を受け、流出した大量の水で地域住民に被害が発生したことがありました。

このように自然災害が激甚化して、被害を的確に予想することが困難ななか、電源の確保等の停電対策だけでなく、非常時に備えた食料品確保、避難経路の確認といった「自分にできることは自分でやる」という皆さんの身を守るための地道な取組みが大切です。また、関係機関と地域住民の間で、平時の段階から応援部隊や援助物資の受入態勢、配備計画、復旧計画などについて考え方を整理・共有し、訓練を実施しておくことも災害復旧への大きな助けとなります。

A冷静な対応が求められることも

停電復旧作業では、作業準備(工事車両、資機材)→伐採・倒木処理・飛来物除去→被害設備撤去→復旧作業(場合により仮復旧)の手順で行われますが、場所によっては、がけ崩れや倒木によって現地へ入れず、被害状況の把握や復旧作業に時間を要することもあります。2019年の台風15号では、停電被害が関東地方の広範囲に及び、倒木や土砂崩れなどによる道路寸断も重なりました。また、被害の状況が見通せないなかで、停電復旧見込みが数度訂正されたり、電力会社が復旧完了を発表する一方で、個別の地域や住居では停電が続く「隠れ停電」(※)があったりと、被災住民への情報発信のあり方が問題となりました。

Pickup Column
※「隠れ停電」とは?

電線の電圧には高圧線、低圧線などの種類があります。停電復旧作業では「高圧線の復旧」→「低圧線の復旧」→「引込線の復旧」の順で対応しますが、現在の電力システムで復旧状況が遠隔で確認できるのは高圧線までで、それ以下は直接現場で確認しなければなりません。これが「隠れ停電」の原因です。

隠れ停電

電力会社も、早期復旧のため懸命に努力されていますが、さきほどのように停電解消にはある程度時間を要するケースもあるため、電力会社への頻繁な問い合わせは控えるなど、冷静な対応も必要かもしれません。

一方で、一刻も早い停電復旧のために、ドローンやヘリコプター、衛星写真を活用した被害状況の迅速な収集・解析、AI技術を活用した復旧予測、各家庭へのスマートメータ設置の促進・活用による戸別の状況把握といった手段を活用して、きめ細やかな情報収集・発信を行うなど、電力会社にも不断の努力が求められていることはいうまでもありません。

点検等をドローンで代替した場合の将来の姿イメージ

 
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