情報誌「TOMIC(とおみっく)」

62号 2020年8月発行(2/4)

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TOMIC第62号 ゼロエミッションを先導する九州の可能性を考える〜九州からの未来提言と5つの戦略〜

「九州の強み・機会」をふまえた5つの戦略

本提言では、こうした「九州の強み・機会」をふまえた上で次のような5つの戦略を提言しています。

@再エネの主力電源化
A蓄エネの社会実装
B脱炭素化の面的展開
C原子力の着実な運用
D環境金融の啓発

@「再エネの主力電源化」では、九州では、先ほどの地熱・太陽光に加え、今後は洋上風力やバイオマスなどが普及していくことも考えられ、再エネにも多様性が生まれます。一方で、太陽光や風力の大量導入に伴う出力制御問題などの課題先進地域でもあり、A「蓄エネの社会実装」にも関係してきますが、今後の再エネの効率的運用をいかに進めていくかに期待が寄せられています。

A「蓄エネの社会実装」では、蓄電池や水素等を活用したエネルギー・マネジメントを目指します。出力変動が激しい再エネを本格的に導入するためには、これらエネルギー・マネジメント技術の社会実装が不可欠です。今後普及が期待される電気自動車や、再エネ由来の水素エネルギーを補完的に使いながら蓄エネを定着させることで、ゼロエミッションに近づきます。

B「脱炭素化の面的展開」では、単体の取り組みでは限界を迎えつつある現在、業種やエリアを超えた一体化や連携による脱炭素化を目指します。また、エネルギーの供給側にとどまらず、需要側においても低炭素化電源とのセットによる電化やメタネーションなど、より一層の脱炭素化を進めることが大切です。これにより、ゼロエミッションが面的に広がります。

C「原子力の着実な運用」では、原子力発電所の安定運転や人材確保を通じて、3E+Sの着実な達成を目指します。原子力が今後どういう方向に進むとしても、既存設備の廃炉等を含めると少なくとも今後数十年単位で向き合わなければいけない問題で、設備の安定運用や人材確保、技術の継承は避けては通れません。いち早く再稼働を果たした九州にこそ、率先した取り組みが求められています。

D「環境金融の啓発」では、グローバルな金融市場のESG資金を取り込むことを目指していきます。従来の技術開発は国が補助金などを出して支援する形が多かったように思います。ただ、国の資金頼みの技術開発は長続きしません。その一方で、世界の金融投資は相当な額に上っています。しかも、欧米ではすでにESG投資が先行しており、中長期的に有望な投資先を常に探しているのです。この投資を呼び込むことができれば、国の補助金のみに頼ることなく、技術開発や再エネの普及を進めていくことができますし、地域経済の活性化にも大いに貢献することになるでしょう。九州が結束していかにこの投資を呼び込むかに本提言の成否がかかっているといっても過言ではありません。

これら5つの戦略は、個別に推進することも重要ですが、それぞれが連続的につながっていることが大切だと考えます。加えてこうした九州の先進的な取り組みを、国内はもちろん海外にも積極的に発信することで、九州がアジアの中の成長センターになることを目指しています。

九州の強み

 
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