九州エネルギー問題懇話会トップページ情報誌「TOMIC(とおみっく)」TOMIC66号(5/5)
66号 2022年9月発行(5/5)
電力自由化の功罪が見えてきた今、果たして電力自由化に意味はあったのかという声も上がっています。確かに現状は自由化がもたらすプラスとマイナスの落差が大きく、市場は混乱気味です。結論を出すには早いのかも知れませんが、それでも自由化自体を否定する必要はないと思っています。価格競争があったからこそ各事業者が創意工夫をして、デジタル化やさまざまなイノベーションが起こりました。また、私たち消費者にとっても選択肢が広がったことは良いことで、これまでにないサービスも享受できています。自由化のプロセスを経験することには大きな意味があり、今後も競争の中でイノベーションは進んでいくでしょう。
また、電力自由化のプラス、マイナス面の認識については、私たち自身の問題でもあると思います。日本では、自由化や新電力の誕生は電気料金が「下がる」と思っている人が大多数ですが、アメリカでアンケートをとると、電気料金が「上がる」と「下がる」がほぼ同数となります。つまり自由化すれば料金が上がることもあれば下がることもあるという認識が浸透していると言えるでしょう。自由化するとはどういうことなのか、それがどういうメリット、デメリットをもたらすのかを、人任せでなく自分なりに考えるべきではないでしょうか。
さらに言えば、電力の安定供給はタダではありません。これまで電気が安定的に届くことは当たり前で、コスト意識を持つ人は少なかったと思います。しかし、現在の日本は、エネルギー自給率が約11%(2020年度)と他のOECD諸国と比べて極めて低い水準であり、しかも島国のために他国と電力を融通することも現状では難しいため、電気料金は火力発電の燃料調達コストの影響を受けやすいという意識を持つべきです。今回の事態は、電力市場が自由化されている中で私たちがこうした事情に日ごろから関心を持ち、安定供給にはコストが生じているということに目を向けて考えるよいきっかけとなったと言えるかもしれません。
(取材日:2022年6月14日)