特集「どうする?これからの日本のエネルギー」

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各エネルギーの特性 2天然ガス Natural gas

天然ガスは、新潟や北海道など国内でも産出されていますが、産出量は国内消費量の3%程度です。このため、消費量の大部分は、液化天然ガス(LNG)という形で海外から輸入されています。資源分布は、石油に比べて地域的な偏りは小さく、日本の輸入先も、マレーシア、オーストラリア、インドネシアなどのアジア太平洋地域が中心で、中東以外からの輸入が7割を占めています。

天然ガスは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が石炭や石油より少なく、また、液化する過程で硫黄分などの不純物を除去するため、化石燃料の中では最も環境にやさしいエネルギーです。日本では、石油危機以降、都市ガスや電力向けに、天然ガスの消費が急速に拡大し、現在では、第一次エネルギー消費の約25%を占め、輸入量は年間8,700万トンに達しています。特にここ数年は、国内の原子力発電の停止に伴い、輸入量が急増しています。

今後も、発電用の需要増加や産業界において石油系燃料から都市ガスへの切り替えなどが進むと見込まれており、天然ガスの消費は拡大していくものと考えられます。

次に日本向けLNGの価格を見てみますと、その契約のほとんどが原油価格に連動する形が取られており、原油価格が上昇すればLNG価格も上昇する仕組みになっています。このため、ここ数年は原油価格の高騰によりLNGも高値で推移していました。しかし、2014年の夏以降の原油価格の下落によりLNGも大幅に値を下げてきています。

化石燃料別環境負荷比較
LNGの供給国別輸入量の推移
地域別天然ガスの価格の推移

国内の天然ガス消費の増加により、LNGの調達先も拡大してきています。中でもいま最も注目を集めているのが、米国のシェールガスです。最近、日本でも米国のシェールガスを輸入しようとする動きが出てきており、早ければ2017年からシェールガスの輸入が始まります。現在、計画されている日本向けプロジェクトは、併せて年間1,700万トンで、日本のLNG輸入量の約2割に当ります。

シェールガス調達の最大の魅力は価格でした。日本へ輸出するための液化費用や輸送費用などを加えても、日本が現在購入しているLNGに比べ2〜3割安いと言われていましたが、昨今の日本のLNG購入価格の下落により、米国からのシェールガスが安いかは分からなくなってきました。

しかし、シェールガスの輸入は、日本にとって供給ソースの多様化にも繋がります。また、米国のシェールガスは、これまで日本が購入していたLNGとは違い、石油価格には連動せず、米国内の市況によって値段が決まる価格方式となりますので、選択の幅が広がってきます。

今後、日本が安定かつ低廉なLNGを調達するためには、LNGの調達先の多様化、共同調達など買主側の連携強化、産出国の上流権益の確保、更には他エネルギーの選択肢の確保などバーゲニングパワーを持つことが重要となります。

 
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