特集「どうする?これからの日本のエネルギー」

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各エネルギーの特性 4原子力 Nuclear energy

九州電力(株)玄海原子力発電所

原子力は、燃料のエネルギー密度が高く備蓄が容易で、燃料を一度装荷すると数年間交換の必要もなく、使用済燃料も再利用できます。また、発電時に二酸化炭素を排出することがありません。こうしたことから、日本では、電力の安定確保や地球温暖化抑制の観点から、官民を挙げて原子力発電の開発を積極的に進めてきました。この結果、国内の一次エネルギーに占める原子力の割合も1割を超え、発電電力量においては3割を占めるようになりました。

しかしながら、2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所(福島第一)事故は、震災時に発生した巨大津波により、海水ポンプや非常用電源装置の機能が喪失、原子炉の冷却機能が失われ、炉心が溶融し、放射性物質が放出されるという極めて深刻な事態を引き起こしました。

これをきっかけに、二度とこのような事故を起こさないために、原子力規制委員会では、2013年7月に原子力発電所の安全性を判断する規制基準の抜本的な見直しを行いました。この基準では、福島第一の事故の教訓などを踏まえ、地震や津波など大規模な自然災害への対応強化、炉心損傷や格納容器損傷の防止、放射性物質の拡散抑制など幅広い安全対策が求められています。現在、この規制基準に基づき、各電力会社では、原子力発電所の安全対策や再稼動に向けた安全審査の申請手続きが進められています。

今回の震災では福島第一が事故を引き起こし、国際的にも非難されていますが、一方で、福島第一と同じ規模の津波に見舞われた東北電力女川原子力発電所(女川原子力)は、海外から高い評価を受けています。

震災後、女川原子力を調査したIAEA(国際原子力機関)は、報告書で「女川原子力は、地震動の大きさ、震源からの距離、継続時間などの厳しい状況下でも、構築物、系統及び機器は大きな損傷を受けず、要求された機能を発揮した。この結果は、耐震設計された設備が過酷な地震の揺れに対しても頑健性があることを証明している。女川原子力の施設は、地震の規模、揺れの大きさ、長い継続時間にかかわらず、驚くほど損傷を受けていない」と高く評価しています。

女川原子力以外にも、福島第一と同じように、津波を受けた原子力発電所は他に3箇所ありましたが、そのいずれもが安全に停止することが出来ています。

次に原子力発電の長期停止による影響について見てみますと、現在、原子力発電を代替するため、石油や天然ガスの輸入が大幅に増加しています。この結果、日本の貿易収支は、2011年には31年ぶりに赤字に転落しています。原子力発電の停止分を火力発電で賄おうとすると、海外に流出する輸入燃料費は、年間約3.6兆円になると試算されており、この負担は、最終的には国民が負うことになります。国民一人当たりの負担額は、年間約3万円にもなります。内閣府では、原子力発電の停止によるマクロ経済への影響について、実質GDPが0.39%〜0.60%減少すると試算しており、日本の経済成長にも影響を及ぼすことが懸念されています。

原子力の課題は、安全性と放射性廃棄物の最終処分です。福島第一のような事故は、二度と起こしてはなりません。また、最終処分場についても、早急に官民を挙げて候補地選定を進める必要があります。

 
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