九州エネルギー問題懇話会トップページ特集「カーボンニュートラルって何?」(15/18)カーボンニュートラルの実現に向けて (2)非電力分野

 

特集「カーボンニュートラルって何?」

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カーボンニュートラルの実現に向けて

(2)非電力分野

  • Q3-9 脱炭素エネルギーとして期待されている水素とは、どのようなものですか?
  • A3-9 水素は、電力分野の脱炭素化を可能とするだけでなく、運輸部門や電化が困難な産業部門等の脱炭素化も可能とする、カーボンニュートラルに必要不可欠な二次エネルギーです。

水素はその原料から、グレー水素、ブルー水素、グリーン水素と呼ばれることがあります。

 

水素は様々な用途が期待されています。

 

ここでは、水素の用途の内Q3-2の図中にある1水素還元製鉄、2FCV、3メタネーション、4合成燃料についてご紹介します。


1 水素還元製鉄

原料の鉄鉱石から銑鉄を作る還元プロセスでは、古来より炭素(木炭や石炭)を用いています。現行の高炉法では、コークス(石炭)を用いて還元する過程で、不可避的にCO2が発生します。

鉄鋼分野は電化による脱炭素化が困難ですが、水素が還元剤として更に利用されることで、同分野の脱炭素化へ貢献することが期待されています。


2 FCV(燃料電池自動車)

水素が電気よりもエネルギー密度が高い特性を生かし、長い走行距離・短い充填時間などを実現することが可能です。
※高性能なタンクとの組み合わせ等により実現

商用車のFC化は、長い走行距離や、短い充填時間などの長所を生かし、長距離輸送用途を中心にした活用が期待されています。


3 メタネーション

メタネーションは水素とCO2からメタン(CH4)を合成する技術です。

CO2フリー水素と発電所等から排出されるCO2を原料として合成されたメタンでは、利用時のCO2排出量が合成時のCO2回収量と相殺されます。

また、メタンは天然ガス(都市ガス)の主成分であるため、たとえ天然ガスを合成メタンに置き換えても、都市ガス導管やガス消費機器などの既存のインフラ・設備は引き続き活用できます。

 

4 合成燃料

合成燃料は、CO2とH2を合成して製造される燃料です。複数の炭化水素化合物の集合体で、 “人工的な原油”とも言われています。

なお、再エネ由来の水素を用いた合成燃料は「e-fuel」とも呼ばれています。

液体の合成燃料には、化石燃料を由来とするガソリンや軽油と同じく「エネルギー密度が高い」という特徴があります。

現在使用されているガソリンなどの液体燃料と電気・水素エネルギーでは、エネルギー密度に大きな差があり、大型車やジェット機を電動化・水素化すると、液体燃料と同じ距離を移動するには液体燃料よりも大きな容量の電池や水素エネルギーが必要となってしまいます。

このようなケースでは、化石燃料由来の液体燃料を液体合成燃料に置き換えることができれば、CO2の排出量をおさえることができます。

コラム6産業部門のカーボンニュートラルに向けた課題

産業部門のカーボンニュートラルに向けては、省エネの徹底によるエネルギー効率の改善に加え、熱需要や製造プロセスそのものの脱炭素化に向けたエネルギー転換が必要です。

工場などの産業分野において、機器のエネルギー源を電力にする電化の促進や、バイオマスの活用などの技術開発に取り組むとともに、製造プロセスにおいても新しい技術の導入が試みられています。

  • 鉄鋼業:水素還元製鉄(Q3-9参照)
  • 化学産業:人工光合成技術
    (光触媒を用いて太陽光によって水から水素を分離し、水素と工場から排出されるCO2を組み合わせてプラスチック原料を製造)
  • セメント産業:CO2吸収コンクリート
    (CO2を廃コンクリートなどに用いて炭酸塩として固定し、原料などに使用)

産業競争力の維持の視点も必要です。

  • 産業の電化、水素利用など非化石エネルギーへの転換は、産業イノベーションの創出になり、日本の国際競争力を高めます。
  • しかし、そのためには電力を含むエネルギーコストの低減が不可欠です。脱炭素化により洋上風力等の再エネ電源の大量導入が進めば、電力コストや非化石エネルギーの製造コストが高くなり、産業の高コスト構造が進み、産業の国際競争力が失われたり、低コストの海外に生産拠点が移り国内生産拠点の縮小が進む恐れもあります。
  • 電化による脱炭素化や水素利用を拡大するには、エネルギーコストの低減が必要です。そのためには、現時点で確立された脱炭素電源である原子力発電の利用が不可欠とされています。

出典:資源エネルギー庁HP「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第36回会合)」

 
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