九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.19 脱炭素化に貢献する原子力発電の未来(3/4)

 
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Vol.19 脱炭素化に貢献する原子力発電の未来

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今後期待されるSMRなどの次世代原子炉

脱炭素化に向けて原子力を利用していくために期待が寄せられているのが次世代型の原子炉です。現在の主流である大型の軽水炉も引き続き必要ですが、小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉といった新しい原子炉の研究開発が進んでいます。

小型モジュール炉(SMR)とは出力が概ね30万kW以下の原子炉のことで、さまざまなタイプがあります。数万kW程度のものも多く、こうした炉を数基ならべて設置することで、必要な量を発電することもできます。そして、SMRの最大の特長はその安全性です。小型で出力が小さいため、万一事故が起こっても自然循環などにより原子炉内の温度がほとんど上昇しないことが確認されています。また小型化により設備そのものを簡素化できるため、メンテナンスに手がかからないことから、さまざまな場所に造ることができます。ですから、SMRは離島や僻地などの需要の少ない場所で地域のエネルギーをまかなう手段としても有用だと思います。

高温ガス炉は、燃料の被覆材料※1に耐熱性に優れたセラミックを、冷却材※2に高温でも化学的に安定しているヘリウムガスを、減速材※3には黒鉛を用います。これにより、950℃近くの高温の熱を取り出すことができる一方で、万が一事故が起きても、燃料が溶け出したり、水素爆発したりすることはなく、自然に冷却できるようになっています。高い安全性と高効率を実現する次世代炉といえるでしょう。

※1 被覆材料:核分裂によって放出される放射性物質を外部に漏らさないよう封じ込めるために用いられるもの
※2 冷却材:核分裂によって放出された熱を原子炉から取り出す役割を果たすもの
※3 減速材:原子炉内で核分裂により発生した高速の中性子のスピードを落とし、次の核分裂を起こしやすい状態にするもの

カーボンフリー社会での高温ガス炉活用のイメージ

 
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