九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.20 医療分野における放射線利用(2/4)
放射線に被ばくすることによって健康面にプラスとマイナスの影響が生じます。
被ばく量が微量であれば、健康づくりに有益であることが知られています。これは「放射線ホルミシス効果」と呼ばれ、例えば、ラジウム温泉などに入浴し微量の放射線を浴びることで、細胞や抗酸化酵素を作る遺伝子が活性化します。その結果、免疫力が向上したり、病気の治癒能力が高まったりといったプラスの効果が見られます。
一方、前述した国際放射線防護委員会勧告にあるように、年間被ばく量が100ミリシーベルトを超えるあたりから、被ばく量の増加に伴い、がんの発生率の増加が確認されています。被ばくにより細胞のDNAが損傷しますが、修復できない損傷が生じたり、不完全な修復をしたりということで、DNAの突然変異がおこり、がん化することもあるということが知られています。
放射線の被ばくによって誘発されやすいがんとして白血病と甲状腺がんが知られています。白血病は細胞分裂が盛んな造血幹細胞ががん化することで生じる血液のがんです。また甲状腺がんは、甲状腺ホルモンの生成に必要なヨウ素を摂取する過程において、何らかの理由で放射性ヨウ素を体内に取り込み発生するケースが考えられます。
これら以外にも、一般に分裂の盛んな細胞、または未分化な細胞ほど放射線感受性が強いとされ、特に胎児や乳幼児、妊娠中の女性などは注意が必要です。また、体の組織としては、造血組織であるリンパ組織や骨髄、生殖器の精巣・卵巣、消化器の腸などが放射線の影響を受けやすいとされます。