情報誌「TOMIC(とおみっく)」

57号 2018年2月発行(2/4)

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TOMIC57号 これからの再生可能エネルギーを考える〜九州の現状と未来を支えるためのエネルギーミックス〜

森林破壊やコストなど再エネの“デメリット”とは

再生可能エネルギーにはメリットがたくさんあります。自然の資源を使うので燃料費はかからず、資源の少ない日本では将来的に期待できるエネルギーです。ただし、現時点での再エネのイメージはマスコミなどによってつくられたもので、すべてがバラ色のエネルギーではありません。デメリットもあることが一般にはあまり理解されていないと思います。

例えば森林破壊の問題があります。国土が狭い島国の日本で太陽光パネルを設置するとなると、森林を切り開いたり、斜面を活用したりすることになります。切り開かれた森林や斜面は保水力がなくなり、雨が降ると大量の泥水が流れ出す事態になっているのです。こうした問題に気づき始めている地方も多く、景観条例や森林条例で規制する市町村や、森林破壊の問題を報道する地方紙も現れ始めました。

またコストの問題もあります。日本の再生可能エネルギーは高コスト構造で、太陽光はヨーロッパに比べて約2倍の価格です。固定価格買取制度があるために、事業者が発電コストを下げるインセンティブが働きにくいのです。買取価格は認定を受けた時点の価格が適用されます。そのため買取価格の引き下げや入札制度の導入が行われても、これまでの認定事業者が稼働すれば価格は高止まりしたままです。当面は下がらないと考えていいでしょう。

太陽光発電の各国のコスト推移

再エネがベース電源になり得ないワケ

一般にはあまり認識されていませんが、出力が不安定という課題もあります。これは課題というより、自然のエネルギーを利用しているので当たり前のことです。太陽が照らないときは太陽光発電はできませんし、風が吹かなければ風力発電はできません。太陽光や風力は自然変動電源で、安定したエネルギーにはならないのです。電気を貯める効率的な蓄電池が開発されれば、安定したエネルギー供給ができ、コストも合理的になるかもしれません。けれども開発にはかなりの時間を要するため、それまでは24時間社会を支えるベースロード電源にはなり得ないのです。

電力需要受給イメージと対策

再生可能エネルギーの出力変動に対応するため、現在は優先給電ルールが定められています。再エネを優先的に利用しようという考え方で、火力発電の抑制によって化石燃料を減らすことができています。その一方で、設備の稼働率が大きく低下する火力発電所は採算がとれなくなり、ドイツなど海外では発電所が閉鎖される事例も出始めました。これも問題となっています。

もうひとつ、あまり注目されていない問題に災害対策があります。そもそも歴史の浅い再生可能エネルギーでは、災害についての対応はほとんど考えられておらず、報道されることもありません。けれども実際にはいくつかの事例があります。2015年6月には群馬県で竜巻が起こり、太陽光パネルが散乱する被害がありました。2016年9月の関東東北豪雨の際には、関東平野を流れる鬼怒川の河川敷に設置された太陽光パネルが流されたことがあります。このときは流された太陽光パネルが勝手に発電し、小動物が感電死する事故もありました。

土砂崩れ

さらに仙台市太白区では、県道の法面に設置された太陽光パネルが滑り落ちて、半年ぐらい県道が埋まっていたことがあります。大手マスコミが報じないだけで、各地ではさまざまな災害が起こっているのです。

Pickup Column
●優先給電ルール

地域全体で電力の供給が需要を上回った場合に、出力を抑制する順番を定めたルール。最初に出力の調整が容易な火力(石油・天然ガス・石炭)が抑制され、次に余剰電力を揚水発電の揚水運転に利用します。続いて地域外(例えば九州から本州など)への電力の供給を行ったのち、バイオマス発電の出力を抑制し、それでも対応できない場合は太陽光・風力の出力を抑制します。

 
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