情報誌「TOMIC(とおみっく)」

63号 2021年1月発行(4/5)

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TOMIC第63号 新型コロナの影響とエネルギー・環境問題〜ポストコロナ時代に向けて加速する「3つのD」とは〜

ポストコロナの時代にエネルギー分野で起こりうること

井上裕史氏

そのほかに、例えば「卒FIT」と呼ばれる問題が存在します。FIT(固定価格買取制度)によって太陽光発電が爆発的に普及しましたが、政府が決めた固定価格での電力買取義務は、10〜20年間で期間が満了します。「卒FIT」は、その後の太陽光発電をどう活用していくかという問題で、発電を続けていくとしたら、電力会社とより安い売電価格で個別再契約するか、蓄電池の設置等により自家消費の量を増やすことが考えられます。今後、昼間の在宅率が上がるなか、自家消費の量を増やして「卒FIT」にうまく対応できれば、エネルギー利用の効率化にも貢献できます。さらに、こうした太陽光発電を地域電源として活用し、コミュニティ内での効率的なエネルギーの利用をマネジメントできれば、地域コミュニティのレジリエンスを高めることにもつながります。

オフィス街などのビルの利用にも変化が見られます。都心部でのビルの空室率が、リーマンショック以降では初めて上がる傾向にあり、賃料も少しずつ下がり始めているのです。リモートワークなどの推進でオフィス需要が減少すれば、必然的な流れだといえるでしょう。建物の稼働率が下がれば、エネルギー消費量の総量は減少します。一方で、在社人数の減少や密を避ける目的のために、1人当たりの床面積が広がっていけば、建物のエネルギー効率は悪化するものと考えられます。

反対に、家庭では在宅率が上がり、エネルギーの消費量は増えていますが、より快適な自宅での生活を求めて最新型の省エネ家電への買替えが進み、エネルギー効率はアップしていると考えられます。

このように「新しい暮らし方・働き方」が定着するにつれて、エネルギー需給に大きな変化が起こると考えられます。

 
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