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Vol.3 環境問題とエネルギー

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地球温暖化がもたらすさまざまな影響

では地球温暖化はどのような影響をもたらすのでしょうか。まず南極の氷が溶けるなどして海面が上昇します。また洪水、かんばつ、高潮、集中豪雨、エルニーニョ現象といった異常気象も温暖化の影響です。気候が変わると生きものにも影響します。生態系が変わって、絶滅する生物も現れるでしょう。また作物などの植物にも影響があり、食糧危機に陥る危険性も指摘されています。伝染病の拡大など健康への影響もあるでしょう。

海面上昇洪水干ばつ

江戸時代に流行したツツガムシ病という感染症があります。ダニの一種が媒介するのですが、明治期以降は衛生面が改善されて見られなくなっていました。ところが、1970年代後半から患者が増え始め、年間に数人ですが死者まで出るようになっています。これも温暖化が原因だと考えられています。健康被害などの地球温暖化の問題は貧困層ほど影響を受けやすく、貧富の差の拡大も心配されています。

大気だけでなく海水温も上昇します。九州の近海でも水棲生物の変化が報告され、以前は南の海にしかいなかったサンゴが北上していることが分かっています。さらに九州各地で見られたサザエが姿を消す地域が現れ始めました。サザエは海藻を食べているのですが、海水温の上昇でエサとなる海藻が生息できなくなったことが理由の一つとして考えられます。

ツツガムシ病患者年別発生数および死亡数(日本)

温暖化抑制のためのエネルギー対策

松岡信明氏

地球温暖化防止のためには、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量を抑えることが何より重要です。そのためにはエネルギーの使用量を抑制するとともに、エネルギーの種類を変えていかねばなりません。二酸化炭素を最も排出する燃料は石炭です。これを、より排出量の少ない天然ガスなどに変えていくべきだと思います。

ただし、石炭より排出量は少ないとはいえ、石油も天然ガスも二酸化炭素を排出しないわけではありません。最終的には排出量をゼロ、あるいはマイナスにしないと地球環境は保てません。それも2030年までの取り組みが非常に重要だと考えられています。そのための現実的な選択肢の一つとして原子力発電を活用すべきだと私は考えています。

二酸化炭素を排出しないエネルギーとして太陽光や風力などの再生可能エネルギーが注目を集めていますが、残念ながら今すぐ主役の戦力にはなりえません。また九州では地熱や水力などのエネルギーも稼働していますが、すでに大規模発電ができる場所は開発しつくされており、新たに開発をするとなると自然環境の破壊といった別な環境問題を引き起こします。さまざまなエネルギーのバランスをみながら使用していくことが、二酸化炭素の排出量を抑えるためには重要なのです。

 
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