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Vol.16 原子力の役割と安全性の追求

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原子力を担う人材の育成と社会的役割

守田幸路氏

私たちの研究室では安全な未来の原子力システムの実現をテーマに、自動的な安全システムの開発や、事故を起こしたときに原子炉がどうふるまうかを研究しています。将来導入される原子力発電所をより安全にするために、20年後、30年後の実用化に向けて地道な研究開発を続けていくことも大学の役割だと考えています。

日本は高いレベルの人材・技術・産業基盤を持つ一方で、原子力に関わる人材は減っており、一部の企業では原子力事業から撤退する動きもあります。しかしながら原子力を担う人材はこれからも必要であり、人材育成は私たちの重要な仕事のひとつだと考えています。原子力工学は総合工学であり、いろいろな分野の技術や知識を身につけ、それを応用していく非常に面白い学問です。少しでも多くの学生に興味を持ってもらえればと思います。

また、一般の方々が持つ疑問や不安に答えていくのも我々専門家の大切な仕事です。学校や一般の講演会など、お話できる場があればできるだけお受けするようにしています。今の高校生などと話していると、マスコミ報道などである程度の知識を持っているものの、表面的な知識にとどまっている印象もあります。海外で原子力発電を止めた国があると話題になりますが、詳しい背景についてはあまり触れられません。例えば、ヨーロッパは陸続きで、火力発電に使う天然ガスのパイプライン網も整備され、原子力発電を止めても他国と電力を融通し合うことができます。しかしながら島国である日本でそれは難しく、ヨーロッパとは事情が違います。このような原子力やエネルギーに関する事実について、公平な視点でお話しすることが大切だと考えています。

 
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