情報誌「TOMIC(とおみっく)」

67号 2023年3月発行(2/5)

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TOMIC第67号 さらなる活用に向けた原子力政策の新たな方向性〜原子力発電所の運転期間の延長に向けて〜

原子力政策の転換とその背景

原子力政策が方向転換した背景には、原子力発電の設備容量が2040年以降に急激に減少する見通しがあります。「2030年度におけるエネルギー需給見通し」によると、2030年度の電源構成比率のあるべき姿として20〜22%を原子力発電としていますが、建設中を含む国内の原子力発電36基すべてが80%の稼働率で運転した場合、ようやく原子力発電の割合は20%となります。しかし、これらすべてが40年で運転終了となると、2030年頃には設備容量が現在の半分に減り、2040年頃には2割程度にまで落ち込んでしまいます。仮にすべての原子力発電所が60年運転したとしても、2040年以降には設備容量が急激に減少する見通しです。

既設炉設備容量の推移見通し(2021年10月)

原子力発電所の再稼働がなかなか進まないことも影響しています。国内には建設中を除くと33基の原子力発電所がありますが、このうち2013年に施行された原子力規制委員会の新規制基準に合格して再稼働したのは10基にすぎません。残りの23基は審査の長期化などによって停止期間が10年以上となっています。また再稼働した原子炉でも、関西電力(株)の高浜3・4号機などは、裁判所の仮処分命令を受けて運転を停止した期間があります。

国民の負担を最大限に抑制しつつ、エネルギー安定供給と2050年カーボンニュートラルを実現していくためには、実用化されている原子力発電の技術や設備を活用していくことが重要です。

 
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