九州エネルギー問題懇話会トップページ情報誌「TOMIC(とおみっく)」TOMIC67号(4/5)
67号 2023年3月発行(4/5)
将来を見据えた中長期的な課題としては「次世代革新炉の開発・建設」や「再処理・廃炉・最終処分プロセスの加速化」などがあります。
(1)次世代革新炉の開発・建設
次世代革新炉としては、@大型の革新軽水炉、ASMR(小型モジュール炉)などの小型軽水炉、B高速炉、C高温ガス炉などがあります。
このうち@とAは、現在利用されている軽水炉の技術をベースに安全性などを強化したもので、比較的短期間で実用化が期待されています。特に@は、技術的熟成度が高く、2030年代前半の建設開始、2030年代中盤以降の商用炉の運転開始を目指しています。Aは欧米でのプロジェクトが先行していますが、大型炉に比べて冷却しやすいなどの安全上の特徴があり、シンプルな構造で初期投資が低いなどのメリットがあります。また、Bは、核燃料サイクルの有効活用に資すること、使った燃料以上の燃料を増殖することも可能であることから、2040年代半ばの実証炉の運転開始を目指しています。Cは、炉心溶融を起こさない安全性と900℃以上の熱を利用できる特徴があります。発電だけでなく、高温熱源を利用したカーボンフリーの水素製造が期待でき、2030年代半ばの実証炉の運転開始を目指しています。
(2)再処理・廃炉・最終処分プロセス加速化
我が国では、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減・資源の有効活用といった観点から核燃料サイクルの推進を基本方針としています。また、高レベル放射性廃棄物の最終処分などを含むバックエンドは、長期的に原子力を活用していく上で、今後も継続的に対応を強化していかなければならない課題です。
(3)サプライチェーンの維持・強化
もう一つ重要な課題が「サプライチェーンの維持・強化」です。原子力を持続的に活用していくためには、原子力産業を支えるサプライヤーが欠かせません。しかし、新規の原子力発電所の建設が途絶えると、原子力産業から撤退する企業が増えサプライチェーンの維持が難しくなります。また、原子力を専攻する学生の減少など人材の確保も難しくなります。重要な国産の原子力技術を維持するためにも海外プロジェクトへ参画するなど、サプライチェーンを支援していく必要があります。