九州エネルギー問題懇話会トップページ情報誌「TOMIC(とおみっく)」TOMIC68号(4/5)
68号 2023年9月発行(4/5)
その場所が地層処分に適しているかどうかを判断するには「文献調査」、「概要調査」、「詳細調査」の3段階の調査が行われ、処分施設の建設に適した場所を絞り込んでいきます。
「文献調査」では、地質図などの文献・データ、学術論文、過去の工事記録、古文書に記載された天災の記録などを調べ、処分場建設地として不適切な地層状況がないかを確認します。既存の文献のみの調査で、ボーリング等の現地調査は行われません。
「概要調査」では、ボーリング調査や物理探査(※)、地表踏査などを行い、坑道の掘削に支障がないこと、活断層、破砕帯、地下水の流れが地下施設に影響を及ぼす度合いなどを調査します。
「精密調査」では、「概要調査」よりも高精度かつ緻密にボーリング調査、物理探査、地表踏査などを実施します。その後、地下に調査坑道(トンネル)を掘り、岩盤や地下水の状況調査や、さまざまな試験が行われます。
(※)人工的に発生させた地震波や電磁波等を利用して地表や水上などから地質構造や地質性状を間接的に調べる方法
これらの調査は、地域の皆さまに十分に説明し、意見を聴きながら進められます。また、調査を次の段階に進める際には、法律に基づき、必ず地域の意見を聴き、十分に尊重することとなっています。地域の意見に反して次の段階へ進むことはありません。よく「一度、調査を受け入れたら地元の意見に関係なく処分場にされてしまうのではないか」という話を聞きますが、これは大きな誤解です。最終的に地域の反対があれば処分場になることはありません。
現在、「文献調査」が行われているのは北海道の寿都町と神恵内村の2自治体だけですが、より処分地に適した場所を選定するには、10〜20カ所の候補地があるのが理想です。文献調査で5〜10カ所に絞り込み、概要調査で3〜5カ所へ絞り込み、詳細調査で最も適している場所を選定するのが理想です。
調査受け入れの可否については、住民の方々の間には「地域振興のために必要」といった意見や、「風評被害が心配」といった意見など賛否両論があるようです。
最終処分の事業規模は、大事業だった青函トンネルの数倍の規模があるという試算もあります。しかも最先端の科学技術と人材が地域に集まり、100年以上続く事業です。少子高齢化が進み、産業が衰退する地域では、大きな産業の起爆剤にもなりえます。安全性の問題はもちろん重要ですが、地域の将来をどうするかといった幅広い視点から最終処分地の問題を考えていく必要があるのではないでしょうか。寿都町と神恵内村では、自治体の知名度が上がり、ふるさと納税が増え、地域の海産物もより売れるようになったという話も聞きます。