情報誌「TOMIC(とおみっく)」

69号 2024年2月発行(2/5)

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TOMIC第69号 日本のエネルギー安全保証のために考えるべきこと〜第1次オイルショックから50年を契機に〜

短期と長期で考えるべきエネルギー安全保障問題

近年はエネルギーの安全保障に、地球温暖化問題が関わるようになってきました。世界中で気温上昇や干ばつ、洪水などが頻繁に起こり、一般の人たちも気候変動を実感するようになっています。地球温暖化に最も大きな影響を及ぼすCO2などの温室効果ガスの増加は人間活動が要因である可能性が極めて高く、温室効果ガスの8割以上がエネルギー分野であることから、エネルギーセクターの脱炭素化は不可欠となっています。企業や投資家の視点からは、脱炭素化は新たなビジネスチャンスのみならず、エネルギーの安全保障にもつながります。そのために活用される再エネ・省エネ・原子力などの技術開発こそが、エネルギー自給率の向上、エネルギーコストの抑制に寄与します。しかしながら、安全保障上のさまざまな課題も解決することができる脱炭素化は、技術開発や一般への普及には長い時間を要するため、長い時間軸で考えていくことが必要です。

一方、足元にはすぐに対応が必要な安全保障問題があります。例えばウクライナ問題では、欧州で天然ガスの供給がひっ迫する事態になりました。そのため、これまで気候変動対策を最優先にしてきた欧州ですが、ここ1〜2年は安全保障対策に大きく舵を切っています。ドイツは廃止を決めていた石炭火力の運転を延長させていますし、イギリスは北海油田の再開発を進めています。温暖化対策の先進地であった欧州でさえ、安全保障を優先せざるを得ないのです。

重要なことは、エネルギー安全保障には長期と短期の目線が必要で、それぞれの手法をうまく組み合わせて状況を乗り切っていくことです。

欧州の政策の変化

 
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