九州エネルギー問題懇話会トップページ情報誌「TOMIC(とおみっく)」TOMIC69号(3/5)
68号 2023年9月発行(3/5)
日本ではどのような対策を取っていけばいいのでしょうか。確かに長期的には再エネや省エネの活用が必要ですが、短期の対策には多くの選択肢はなく、私は、既設原子力発電の再稼働が効果的だと考えています。今すぐ使える大規模な脱炭素電源はこれしかありません。
長期の対策は地道な開発を続けていくしかありません。再エネに関しては、太陽光発電にまだまだ余地があると考えています。新築住宅に必ず太陽光パネルを設置するなどの法整備や、蓄電池と組み合わせた効率的な運用が必要だと思います。洋上風力もポテンシャルのある分野ですが、漁業関係者との調整や、大型設備設置のために必要となる港湾などのインフラ整備が必要となります。国や大手メーカー、商社などが開発をリードしていくべきであり、いったん成功事例が生まれると一般への理解も深まっていくはずです。
省エネに関しては、産業部門の大手企業ではやりつくした感があり、今後は省エネが進んでいない中小規模の企業が対象となっていきます。これら企業は省エネのためのノウハウも資金も持ち合わせていない例が多いことから、補助金を得るためのサポートなどの方策が必要となります。
もうひとつ、日本で最も遅れているのが建物の省エネです。仮に一般家庭で省エネのためのリフォームを行うとなると、かなりの費用がかかるため二の足を踏む人も多いでしょう。省エネは効果が見えづらい側面があるので、どういった効果があるのか、一般に向けて「見える化」を進めていく必要があります。そうすればLED照明が経済性と環境への負荷の低さから普及していったように、時間をかけて浸透していくと思います。
「見える化」を行うときに重要となるのが価格。人々の行動が変容するとき、価格が大きな役割を果たすことが少なくありません。価格は消費者にとって分かりやすい目安であり、電気料金やガス料金が下がったとなれば、目に見えて利益があると感じられます。自分に利益があると分かれば、エアコンや冷蔵庫などの家電を買うときも、製品価格は上がってもエネルギー効率の良いものを買うようになります。
マーケットが本来持つ調整機能が十分に発揮されれば、補助金に頼らずとも、価格をきっかけに人々が新しい行動を起こすようになり、効果的な支援が可能となるでしょう。